2016年12月19日 暮らしの体験記
[若者シリーズ①]ろくべえと遭遇!!So good!!
「せんだんご」はサツマイモのでんぷんを材料にして作る発酵食品で、対馬の伝統的な保存食品として親しまれてきたそうです。また、この「せんだんご」をもとに作られる麺料理「ろくべえ」も長らく愛されてきたとか…
「せんだんご」、「ろくべえ」作りのプロセスは地域や家庭によって違うようですが、僕が見聞きしたのは以下のようなものです。
こうこいも(さつまいも)を育てる→収穫する→細かく切って干す→水につける→カビが生えたら洗いまくる→こす→またこす→布でこし取ったものを乾燥させる→せんだんご完成
せんだんご→湯を入れてこねる→固める→軽く茹でる→こねる→茹でる→おろし金のようなもので削って麺状態に→ろくべえ完成
今回は、女連(うなつら)地区の集会所にて、せんだんごからろくべえを作る過程を見学してきました。その様子をつたない文章で紹介したいと思います。
せんだんご談義を終えると、いよいよろくべえ作りのスタートです。おばちゃん達が役割分担して、それぞれの持ち場について作業します。
まずはせんだんごにお湯をかけて、こねていく作業です。大きなたらいの中で、かぴかぴのせんだんごにぽかぽかのお湯を浴びせながらこねていきます。おばちゃんたちはなかなかにパワフルです。ガヤガヤしていて少々カオスですが、なんだか活気があって面白い。
一通りこねたら、野球ボールくらいの大きさにして固めていきます。見た目は土っぽい色なので、なんだか泥だんごのようです。食べ物だと言われなければ、とても食べ物には見えません。
完成した泥だんご(失礼)をテニスでもするのか、と言いたくなるような大きなすくい網で、炊き出しができそうな大鍋に張られたお湯に放り込んでいきます。さっと湯通ししたらもう一度ボウルにあげ、こねてこねてこねまくります。見たかんじ結構ハードな作業だとお見受けします。いやあ、お元気だこと。
あちこちでこねこねされている間に、小さなお鍋でスープを作ります。地鶏ガラをぐつぐつと煮込んでいくようです。しばらくすると、旨味を感じる優しい香りが部屋中に広がります。
鍋の中を覗き込んでみると、そこには黄金色に輝く綺麗なチキンスープが。ここに対馬名産のしいたけや香りの高いゴボウ、歯ごたえのある地鶏など、美味しい食材を加えていきます。しっかり煮立てて醤油などで味をつければ、おいしいスープの出来上がり。いやあ食べるのが待ち遠しい。このスープが不味いはずはない。
さて、ろくべえ作りもクライマックス。先ほどまでこねていたものをもう一度湯通しして固め、削って麺のようにして茹でる作業に移っていきます。
初めてお目にかかる、おろしがね?かんな?のような調理器具で、土色の団子を削っていきます。触っていないので感触はわかりませんが、見たかんじムニュムニュとしています。謎の物体が次々と沸き立つお湯の中に吸い込まれている様子は、まさにあれ!あれってなんや。そう、見たこともない光景でした。
茹で上がったものを見てみると、先ほどまでとは打って変わり、なんだか食べられそうなものになっています。十割蕎麦ならぬ二十五割蕎麦といったかんじのルックスです。小分けにして、箱詰めされたろくべえは、どこか芸術的な見た目をしています。
これを皿に盛ってスープをかければ、ろくべえさんの出来上がり。あとは食べるだけです。
長机を囲んでいただきます。一口食べると、食べたことないはずなのにどこか懐かしい、落ち着く味がします。うまし。ツルツルとした食感のろくべえに、あっさりながらも旨味の詰まったスープがよく合います。まさかこんなに食べやすかっただなんて…泥だんご状態の時点では想像できなかった味です。
あっという間に1杯目を平らげて、お代わりを頂きます。いやあなかなか病みつきになりそう。全然重たくない、体に優しい味なので、いつまでも食べていられる気がします。
すぐになくなり、3杯目を要求。どうやら出来がよいせんだんごから作ったろくべえは売り切れたらしく、出来がイマイチなものしか残っていないとのこと。せっかくなので食べてみると、何ということでしょう。味はともかく、食感がまったくといっていいほど違います。質がよいものから作った方はツルツルとしていましたが、イマイチな方はどこかもぞっとしています。味が大きく違うわけではないはずですが、食感が違うので別物のようです。同じ原料・同じ方法で作っているのにここまで…せんだんご&ろくべえの世界は奥が深そうです。
なんだかんだ言いつつ4杯のろくべえを完食して大満足。食べるだけにはなってしまいましたが、有意義な時間を過ごすことができました。
さて、今回は女連や志多留など、様々な地域から来たおばちゃん達が共同でろくべえを作っていました。高齢になると移動手段の問題などもあって、自分が生活している地区から出ることは少なくなるようですが、このような会をきっかけに外に出て他地区の人と交流すれば、きっと刺激になってボケ予防になるよなあ、などと考えてしまいました。
午前中のせんだんご談義では若者顔負けの激しい議論が交わされていましたし、食後に行われた東京農業大学の岡田先生による講演も熱心に話を聞いておられる方が多かったです。いくつになっても人は人なんだなあ、と感じるとともに、自分も年をとってもイキイキと生活を送ろう、と考えるきっかけになりました。
先人たちが残してきた、ろくべえというものを作る先人の姿を見て、22歳の若者は感銘を受けたのでありました。